91.自信

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最終更新:2024年10月11日

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91.自信

は、自分に自信がなかった。

何をするにしても自信がなく、全てに対し億劫に感じていた。

それは生きていく自信がなくなるほどだった。

そんなある日の事。

Aはその日も、自信について考えていた。

するとAは「自信がないことについては、誰よりも自信がある」ということに気がついたのだった。

Aは思った。

「それなら、自信があるということになるのではないか。自信がないことに自信があるのだから」

そしてAは、自信があるように振る舞うと、実際に自信が出てくるといった科学的裏付けを知ったのもこの頃だった。

そこでAは、根拠は一旦横に置き、自信があるように振る舞う習慣を付けてみることにした。

周りから言われる、今までのAを基準に判断した声も気にしないことにするなど、徹底することにした。

するとAは、日増しに自信がついてくるようになり、実際に自信があると思えるようになった。

それでもAは不安が残った。

「根拠がない自信は、いつ崩れるか分からない」

それでもAは、これまでの経験は活かしたかった。

するとAは、友人の誘いで「空気投げ」という技を見る機会があり、実際に練習したくなった。

これは相手に触れずに投げ飛ばすというものだった。

Aも最初は半信半疑の部分があった。

されどAは、これまでの自信を付けた経験を活かし、絶え間ない努力を続けていった。

そしてAは「空気投げ」にも自信がつき、道場をひらくことにした。

すると「弟子入りしたい」という人も現れてきた。

Aは自信がなかった頃の自分を思い出し、快く許可した。

入門した弟子は、練習のため豪快に投げられる。

その繰り返しが、いつしかTV局の耳に入り、実演することになった。

Aは一躍有名になった。そして日増しに入門者も増えていった。

そんなある日の事。

総合格闘技のチャンピオンが挑戦してきたのだった。

Aはその頃には圧倒的な自信があったため、快く受諾した。

全国の視聴者が見守る中、試合は始まった。

Aは一瞬で、触れることなくチャンピオンを投げ捨てた。

そう思ったのは、夢の中だった。

Aが目を覚ますと、チャンピオンの一発で伸びてしまったことを知った。

Aは、思い込みがいかに現実からかけ離れているのかを思い知ったのだった。

それでもAは思った。

「ここまで来たらやめられない」

Aは、調子が悪かった事を認め、空気投げの名前を催眠投げに変え、鍛錬を再開した。

Aは教訓として、催眠投げが通用しない相手とは戦わない事を固く心に誓った。

そうしている内に、Aは歳をとり永遠の眠りについた。

そしてAの死後、百年が経過した..

Aは「生涯一敗だけした空気投げの達人」として伝説になり語り継がれているのだった。

補足

自信がなく悩んでいる人は、いつの時代にも数多くいるといえるだろう。

故に自信がある人間は目立つし、憧れさえも感じさせることができるといえる。

とはいえ、それはもしかすると現実から遠ざかっている演出のようなものかもしれない。

このパフォーマンスは多くの人を楽しませ魅了する力がある。

それはともすれば、現実と変わらなくなっているのかもしれない。

であるなら、誰しも自信を作れる可能性は秘めているといえるだろう。

と同時に、幻想故にその圧倒的な力のコントロールを失う恐怖がついてまわる。

それに耐えられる人は少ないのかもしれない。

であるなら、結局のところ、自信の正体とは一体何なのだろうか?

もしかすると、自信にこだわらないことこそが、自信を付ける確実な方法なのかもしれない。そうでなくても「努力」は嘘をつかないのだから..


次は..92.神話

1.解釈



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