最終更新:2024年10月11日
103.多様性
Aは創り手として、次は何を創ろうか考えていた
幸い今の時代、インターネットを探せばネタは腐る程あったため、不自由しなかった
既に売れている作家からヒントを得るのもいいが、売れてない作家からヒントを得ることもあった。Aは既に実績があり環境が整っていたため、先に出せた。
その他、人が集まっているサイトに行くだけで、どんな言葉を使い、何が流行っているのかが直ぐにわかるため、どんどん積極的に取り込んでいった。
「楽勝だな」
そんな日常をおくっていたため、Aは頭の回転が早く、売れるモノ作りをして認められる存在になっていたのだった。
そんなある日のこと、あるキッカケからAはそれまで目をそらしてきた現実を見なくてはならなくなった。
それは独創性というものだった。
Aは、ただ面白ければいい、ただ売れればいい、ただウケがよければいい、感情を刺激できればいいという基準でこれまできたため、そこに人間という相手がいることをすっかり忘れていたのだ。
Aにとって、全ては情報としか見えていなかったのだ。
Aには既に、命の温もりが感じられなくなっていた。
そこでAは、これまでの自分考えを思い出していた。
今の時代、個性が重視され、多様性が渦巻いている。
「おれは一生安泰だ」
ネタ作りには一生困らない、しかもそれで注目を集められると安心仕切っきっていた
しかしその時のAはまだ、そのどれにも命が吹き込まれていなかったことに気がついていなかった。
表面的な感情を刺激するだけの言葉を並べた薄っぺらい作品ばかりだった。
以前のAは、思っていた
「アホなやつらの時間を奪うのは簡単なことだ。それで数字で結果を出せば問題ないだろ」
Aの作品は、ただ続きが気になるようにだけ作り、内容の質は二の次になっていた。
それを与えられる側は「何か騙されたような気がする」と感じながらも、それを認めたくないため、深く考えず次の作品を求める繰り返しをしていた。
ただ気に入らない時は、思いきり攻撃してストレスを発散していた。
それこそがAの目論見通りだった
その瞬間を生きることを、その時だけよければいい、その時だけつなぎとめればいいという意味に履き違えて受け取っていたのだった。
いつの間にか、読者のご機嫌ばかり伺っていれた。
その結果、与えられた側はそれに気づき、Aを徹底的に攻撃したのだった
辛酸を嘗めたAは、命がないものはそれがどんなに個性的で多様性が溢れてみえても、結局似たようなものだと気がついたのだった。
どんなことであれ、生命の力がやどっていないものは、何もないに等しかったのだ。
そこには独創性は存在せず、上辺だけで多様性を真似するという、ただのはやりに乗っかっただった。
スピードの早い時代、乗っかるのが精一杯で、内容の薄さまでは考えておらずテクニックでただ誤魔化し続けていた。
Aは思った
「これはまるで、サイバーマンが他のサイバーマンと違うようになりたいと思い、変わったことをしているようなものだな」
そう。どんなに変わったことをしても、サイバーマンはどこまでいってもサイバーマンなのだ。
サイバーマンが「怒ったぞ~!」と言ってみても、それもやはりサイバーマン。
「痛い」という言葉を使えばいいだろう。
Aは自分自身がいつの間にか感情を分析するだけの、冷たい機械と化していたことにショックを受けたのだった。
そこでAは考え方を変えることにした
「それなら多様性を利用すればいい」
Aは多様性で相手の個性を認めようとする流れを作り出すことにした
「これで社会さえ敵に回さなければ何だって自由にやれる」
Aは、多様性という名の下に善悪境目をなくさせ好き勝手に言える時代がきたことに喜びを隠せなかった
しかも考え方の違いは増えれば増えるほど、人の孤独感と混乱状態が増し、ますます人は深く考えなくなる
Aは自分への社会からの攻撃は巧妙に交わしながら、他に対しては平気で傷つけていきながら思った
「こんな考え方を持った俺も、多様性の社会の中ではいたって普通だよな」
補足
サイバーマンはドクター・フーに出てくる地球外生命体サイボーグの一種
サイバーマンに個性は殆どないといってみてもいいだろう。
アップグレードという言葉や消去など、サイボーグが使用するような言葉が流行る世の中になってきたのは、サイバーマンが現実になる前触れなのかもしれない。
そう、バックツゥーザ・フューチャーが予言していたことが現実になったように..
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