最終更新:2024年10月11日
3.感覚
A星人が、地球へやってきた。
地球では、はじめての異星人との交流に全世界からの注目が集まっていた。
ところが、そのA星人は、何とも理解し難かった。
何が理解し難いのか?
地球人と同じように、目も鼻も口もついている。
話してみると、考え方もそこまで違いはなかった。
違いは、各器官の機能だった。
A星人の口は、地球人で言うお尻の穴の機能があった。
逆に、お尻の穴が、口の役目をしていた。
目には鼓膜があり、地球人の耳の役目を果たしている。
耳には水晶体が付いており、目の役割を果たしていた。
鼻からは尿が出るし、尿道の位置で匂いを感じていたのだ。
これはどうやら環境の違いにより、進化の過程が異なっていたため生じたものだったようだ。
これまで身体器官の利用方法が違えば、感覚も違い、コミュニケーションがスムーズにいくかが懸念された。
それは取り越し苦労だった。
A星人は言った。
「ご心配に及びません。私達は、あなた方と感覚が似ているため、アプローチする星として地球が選ばれたのです」
それを聞いて、地球の人々は驚きを隠せなかった。
「感覚は人によっても違う。それなのに違う星で、しかも身体器官の利用方法が違うに関わらず似ているとは驚きだ」
それを聞いたA星人は言った。
「私達は、想像力が豊かですから」
補足
もしかすると、元々音も色も風味も何も存在しないのかもしれない。
それらをただ、想像力を駆使して表現しているだけだという可能性も否めない。
であるなら、想像力さえあれば、異星の者とさえも、共有できるのかもしれない。
とは言っても、身体器官が全く違っても通じるのだろうか?
「想像力が及べば」といった話となるのかもしれない。
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感想
この短編小説を読んで、「感覚」とは身体的な機能に左右されるものではなく、想像力が鍵となることに気づかされました。私も異文化との交流で、言葉や習慣の違いに戸惑った経験がありますが、想像力を働かせることで本質的な理解が可能になると感じました。人間関係にもこの「想像力」が重要だと思わずにはいられません。