19.解釈2
嘘つきの天才Aは言った。
「私は天才です」
中でもAは、自慢話が得意だった。
直ぐに見破られない調べることが難しい嘘を、ツラツラと言う習慣があった。
頭の回転が早く、ツッコミには即上手にかわしたので、直感的に怪しいと思う人も、ついAを凄いと思うようになっていた。
Aは警察すらも騙すことができたので、犯罪からも上手く交わすことができた。
協力していた組織が犯罪に手を染めた時も、逆に組織を潰すために、警察に頼まれるよう仕組むこともできた。
当然、金を稼ぐこともお手の物だった。
Aは投資もやっていたため、市場にもっとお金を回させたいと思った。
そこでAは次の考え方を広めることにした。するとAの周りに、Aの知名度にあやかろうとする人間が集まりペテン師集団が形成された。
Aは言った。
「お金を稼ぐためには、お金を使いなさい。借金してでも使いなさい。借金は踏み倒しなさい」
このような主張も、専門用語を操りツッコミには直ぐに返していたので、何となく「そうなんだ」と思わせることができた。
上手に返されると、殆どの人が納得していた。特に学歴が高いほど納得するスピードも速く、そのお陰で更にAの嘘に信頼性が生まれ磨きがかかっていった。
Aには信頼できる説明は必要なかった。ただのもっともらしい話だけでカリスマ性を築き稼いでいった。
騙された愚かな人間だと思いたくない支持者は、ますます強固な信者になり増えていったからだ。
そんなある日のこと「私は無能の天才です」というBが現れた。
Bは無能なので誰よりもAを憧れていた。にもかかわらず無能なため、Aの言うことが理解できなかった。そのため、理解するために一つ一つしっかりとした裏付けをとっていった。
するとAの言っている殆どが、デタラメであることが判明してきたのだ。
BはAの嘘を見破ったことで、賢くなったと思えた。
Bは「信じていたことに裏切られた」という気持ちよりも、開いた口が塞がらず、それすらも通りこした後、思った。
「ここまでいったら、かえって面白い」
もしかするとBは、自分に言い聞かせていたのかもしれない。
それはAの思惑通りだった。
Aは他の人間に自分が賢くなったと思わせ、判断を誤らせることも目的の一つとしていたからだ。
確かにBは、Aを疑い怪しんだ。
それでも、Aの支配から目覚めることはなかったのだ。
Bが目が覚めたと思った世界は、まだAの世界だった。
補足
ただの可能性の一つだとしても、どんなことでも広義に解釈できる。幻さえも現実にあるように見せかけることもできるといえるだろう。
目が覚めた世界が現実とは限らないように..
次は..20.芸術と道徳