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最終更新:2024年10月11日
84.正当性
Aは、英雄だった。
戦争ではもっとも敵を殲滅(せんめつ)したということで、国から多くの賞が受賞された。
元々Aは、暴力的な人間だった。
人を殴ってお金が稼げる上、称賛されるということで、はじめは総合格闘技の世界に足を踏み入れた。
Aは人を思いっきりぶん殴ることができて、ストレスも解消されていたため満足していた。
けれど、しばらくするとそれも飽きてきた。
丁度そんな時のこと。
志願兵の募集を見かけ、参加することにしたのである。
Aは敵を殺した時、これまで味わったことのない爽快感を得ることができた。
もちろん敵の中には、家族を持つものがいたこともも知っていたし、優しく思いやりのある人間がいることは理解していた。
けれども、Aにとってそんな事は知ったことではなかった。
ただ殺してスカッとしたいという衝動にかられていただけだったのだ。
喜びに任せ殺していたところ、自国に帰ると「多くの人を開放し命を救った英雄」と、国中から称賛を浴びた。
それでもAは、自分が異常な性格であるのは理解していたので、自国に帰ると頭のスイッチを切り替え、法を犯すことはなかった。
そんなある日の事、Aが偶然見かけたのは、殺してきた敵と同じ国の男だった。
その男はこれまで、数多くの無実の人間を殺してきたことを、Aはある筋で聞いて知っていた。
その男が爆弾ベストを着て都心に行くと聞いており、Aは有無を言わさず飛びかかった。
その瞬間、男が何かスイッチを押すような素振りに見えたため、Aが殴って止めることに成功した。
そして男は死んでしまった。
その後Aは、多くの警官に囲まれ逮捕されることになった。
Aは事情を説明した。
すると「そんな事実はない。お前は騙されていたんだよ」と聞いた。
死んでしまった男は、何の関係もない、ベストを着た無実の人間だったのだ。
Aは訴えた。
「俺はなんてことをしてしまったんだ。でも悪いのは俺じゃない。俺を騙しそそのかした奴だ。
俺は多くの人間が助かると思ってやったんだ。
それに俺は、この国の英雄だぞ」
すると奥の部屋から、上官と思われる人間がやってきてAに説明した。
「君のような反社会性の強い危険な人間を、我が国で野放しにしておけると思うかね?
もしまた必要な時が来たら、その時は頼むかもしれないがね」
それを聞いたAは思った。
「なるほど。俺は敵がいてこそ活かされるということか。
それなら、今の俺の敵は貴様だ!」
Aは上官に飛びかかり、その場で射殺されたのだった。
補足
平和な時代だからこそ、発言できることもある。
とはいえ、自由とは何なのだろうか?
それは人によっても違うといえるだろう。
それでも、殺す自由はあるのだろうか?
そこまで極端でないとしても、殴る自由でいえば、限定されたマットの上ではあるのかもしれない。
であるなら、限定された空間であるなら、殺す自由もあるのだろうか?
平和のためなら許されるのだろうか?
対話が通用しない横暴な権力に立ち向かうためなど、理由は様々なことが考えられる。
限定された空間だけというならば、その内と外のスイッチは簡単に切り替えられるのだろうか?
同じ人間がやることであるなら、簡単にはいかないといえるのだろう。
なぜなら、一貫性がなくなるからだ。そう考えると簡単なようで簡単ではないようにみえる。
とはいっても、意外と簡単な事なのかもしれない..
次は..85.加担
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