13.共感

A男は嘘つきだった。

A男はこれまで、嘘を付いて生きてきた。
なぜなら、嘘をつかなければ生活自体がうまくいかないからだ。

これはどういうことなのか?

例えば、世間で空は青いという。
しかしながら、A男には青いとはとても思えなかった。トマトも赤に見えない。

これは色だけでなかった。
痛い思いをした時も「痛い」とは思えない。それだけなく、一般的に美しいと思われているものも、美しいと思えない。醜いといわれているものを、美しいと感じる時もある。

そんな中、本当の事を言っていればコミュニケーションが難しくなり、生活に支障をきたすからだ。

この理由で、A男は出来る限り本当の事を言わず、嘘を付いて生きてきた。

そんなある日の事、はじめて感覚が同じような女性と出会う機会に恵まれた。
A男は、その女性だけには本当の気持ちを打ち明けられた。相手も同じだった。

その後、自然と結婚することになった。
分かり合えるのは、世界で唯一相手だけだったのだから、A男は幸せな生活を過ごしていた。

ところがある日の事、ちょっとした事で揉めてしまうことが生じた。

それは、あるドラマを観て、面白い、面白くないといった些細なことだった。
一般的には些細な事で片付けられた。だが二人にはそうはいかなかった。
なぜなら、それこそが二人を結びつけていた要因だったからだ。

このすれ違いは決定的となり、二人は友人として別の道を歩くことになった。

補足

感覚を言葉で言い現すのは、簡単なようで難しいといえるのかもしれない。それは人によっても違う。

本来であれば、共通したものがあり、それは微妙な違いで落ち着くのかもしれない。

それでもその感覚は厳密には当人しか分からないのだから、全く違っていてもおかしくないといえるだろう。

それとも、それは単に表現の違いということになるのだろうか?


次は..14.パラドックス

1.解釈


BlogX編集部

当サイトは、心理学、ビジネス、ライフスタイル、健康、テクノロジーなど多岐にわたる分野の専門家集団によって運営されています。それぞれの分野で豊富な経験と実績を持つ専門家が、信頼性の高い情報を提供しています。特に、各専門家は大学の教授や著名な著作家、業界での豊富な実績を持ち、最新の研究やデータに基づいたコンテンツを作成しています。読者の皆様に有益で信頼性の高い情報をお届けすることをお約束します。