最終更新:2024年10月11日
86.自由意志
A男は、考えていた。
「どうすれば成功できるのだろうか?」
A男は、失敗から学ぶ事や、まずはやってみて経験から学ぶという事を、これまで嫌という程やってきた。
お金も惜しみなく使ってきた。
ところが、結果として冷静に振り返ってみると、殆ど何も変わっていない事に気がついたのだった。
そこでA男は、これからは同じ轍は踏まないと心に固く決めた。
残された時間も無限というわけではないのだから、今後はしっかりと考えた上で、行動を起こすことに決めていた。
そんな中、A男はシュミレーションを頭の中で繰り返していた。
「こうすれば、こうなる。するとこうなる」と、数え切れない程繰り返していた。
すると、どうしても結局のところ、何も変わっていないところに舞い戻ってくるのだ。
そこで、発想の転換が必要になってきた。
専門家のアドバイスも受けながら、コンピューターにシュミレートもさせながら、様々な角度から検証していたのだった。
当然、どれもメリットがありデメリットがある。
ローリスクハイリターンを探していても、短期的には適合するものも、長期的に見ると適合しないものが殆どだった。
仮に全てが同じような結論に導かれるとしても、どちらの道を行くのかを選ばなければならない。
そうやって考えている内に、いつの間にか時間は過ぎていった。
そしてA男の人生は幕を閉じることになった..
A男は最後に思った。
「私の人生に悔いはない。なぜなら、数多くの人生を経験した事と同じほど、考え抜いてきたのだから。最後に気がかりなのは、あの世でどうやって成功するかだ」
補足
選択している内に餓死した「ビュリダンのロバ」では、時間軸は設定されていない。
それは人生という長い時間でも当てはまるのだろうか?
「ビュリダンのロバ」のように、全く同じ状況で選択に迷う、ということはなかったとしても、私達は常に選択の連続の中で生活している。
自由意志が大切とはいえ、選択には一定以上の労力が伴うため、考えていても仕方ないことは、自動的に選択しているといえるだろう。
その自動選択は、歳と経験を重ねるごとに増えて行き、いつの間にかどの殆どがルーティン化し自動的に選択している生活となっているのかもしれない。
であるなら、選択に迷っている間にいつの間にか時間が経過してしまい餓死するロバと、そこまで違いはないのかもしれない。
選択している事自体に気がつかない違いはあるのだろうが..
次は..87.笑い