81.痛み2
Aには、痛みを感じなかった。
これは身体的なものだけではなかった。
そのため、誰かに何を言われても何も感じなかった。
何も感じなかったため、誰かに何かを言われる事を恐れる必要もなかった。
言われた人の気持ちも理解できないため、Aはこれまで、誰に遠慮することなく言いたい放題を言ってきた。
ところがそんなある日のこと、相手を怒らせてしまい、半殺しの目にあうことになってしまった。
その時、後遺症が残った。
Aは、痛みを感じるようになっていたのだ。
Aは思った。
「これでは不完全だ。役に立たたないとみなされ、いずれはゴミ処理場行きとなってしまうだろう」
Aは、最新型のロボットだったのだ。
その後遺症が、新型の開発に大いに役立つことになった。
それまでのロボットは痛みを感じる機能がなかったため、制御が効かなくなることが多く、人間を傷つける事があり、それが懸念されていたのだ。
その一方で人間は、ストレス化社会の影響から心の痛みを取り除く処置の開発が進んでいた。
その時も、痛みを取り除く事での社会的影響が懸念されていたため、Aの出来事は大いに役立つことになった。
そしてそれが元で、アンドロイドとサイボーグが誕生した。
それから十年後..
町中ではこのような会話がかわされていた。
「やぁ、君は元アンドロイド?それともサイボーグ?」
そして更にそれから百年後..
会話は次のように変わっていた。
「私の祖先は、アンドロイドだったのよ」
「そうなんだ。最近聞いたんだけど、僕の先祖はサイボーグだったってさ」
補足
現時点では、解明されていない問題があるため、ロボットの開発となると、意識をはじめ痛みや感覚が取り上げられる事が多い。
神経系統の多さと脳の研究については、過去ロボトミーの問題もあり、外部から調べることが中心となるため、なかなか進歩が進まないのかもしれない。
だとしても、遺伝子工学のキャスパーのように、一旦キッカケが出来ると一気に進む可能性もある。
その時には、感覚は大した問題ではなくなっている可能性も否めない。
「痛みとは、実際の危険を回避する役目」
それ以上でもそれ以下でもなくなっている可能性もあるといえるのだろう。
危機感を煽るマーケティングがなくっていればの話だが..
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