最終更新:2024年10月11日
80.証明
神は激怒し、A男を叱咤(しった)した。
「お前は、何様なのだ!」
確かにA男は、神を否定した。
神の矛盾点を数多く述べた。
ところが、その後神の怒りに触れたのだ。
A男は、恐る恐る言った。
「何様と言われましても、ただの人間です」
すると神は落ち着きを取り戻し、諭した。
「ほぅ。ただの人間なのか。ならば、なぜ私の存在を認めようとしない?
私を批判し、否定するのであれば、お前は私より賢いということになる」
A男は答えた。
「いえいえ、滅相もない。私はただ、疑問に思うと夜もおちおち寝てられないたちでして、いくつか引っかかることを言っただけですよ」
神は説明した。
「何も疑問に思う必要はない。私は常に深い考えの元に物事を起こしているだけなのだ。
お前達に理解できない事があったとしても、それは仕方のないことだ」
それを聞いたA男は聞いた。
「では、その深いお考えというものを、是非とも聞かせてくれませんか?」
神は答えた。
「言っても構わないが、それは意味のない事だ。
なぜなら、今のお前達では到底理解できないからだ。
時期が来たらわかる時が来るだろう。
その時になれば話してやろう」
A男は言った。
「確かにそうかもしれません。
しかしながら、今はまだ分からなくても、その話をヒントに理解できる道が開けるかもしれません。
是非、お聞かせください」
神は言った。
「お前は、実に面白い男だ。
だが、私は言ったはずだ。
時期が来たら話すと言った事にも意味があるのだ。
聞くだけ時間の無駄だ。
お前はそれに従えば良い」
A男は、納得いかない様子で言った。
「おかしいなぁ。それこそが私の頭を悩ませている頭痛の種なのです。
それでは辻褄(つじつま)が合わない。
それでは、存在するという証拠をみせてください」
それを聞いた神は、呆れた様子で尋ねた。
「お前の名前は、何といったかな?A男ではなく、本名を聞かせてみよ」
A男は言った。
「はい。私の名前は、殺人課のコロンボという者です」
それを聞いた神は言った。
「ほぅ。なるほど。
であるなら証拠を用意するのは、私ではなく、お前の役目ではないか」
補足
本来意味の無いものに力を与えてしまうと、どうなるのだろうか?
もしかすると、意味付けで終始するといった、益々意味のないものになるのかもしれない。
悪に対しても。苦しみに満ちていることに対しても、その他全ての現象に対し「それは、こうだから」と、意味付けするしかなくなってしまう。
知性を超えたものは、想像するしかなくなる。
そうは言ってみても、想像は知性の範囲内で起こるともいえるのだろう。
確認できないものに対し、存在の確かさを証明できるのだろうか?
どちらにしても、想像を超えたものを確認する術はないに等しい。
合理的な考えを、不合理に片付けるのは簡単なのかもしれない。
これは、批判や否定にも通じのだろうか?
どんな事においても「非難される事が無くなることはない」ということなのかもしれない。なぜなら、全知全能の存在でさえも非難できるのだから..
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