最終更新:2024年10月11日
65.価値
Aは突然の出来事に驚いていた。
これまで平凡に暮らしてきて、特にこれといって取り柄があったわけでもなかった。
それがいきなり「地球で価値がある」とみなされたからだ。
それは数日前の出来事だった。
惑星Xから宇宙集団組織の代表として、はじめて地球にコンタクトをとってきたというのだ。
惑星Xの代表は言った。
「この地球で価値有る生物と話す必要がある。価値有るものを持った人間を選んでください」
そこで、はじめに大統領が選ばれた。
惑星Xの代表は言った。
「彼は地球で言う、権力という力を持っている。地球の管理者の一人かもしれない。
それは宇宙では価値があるとみなさない」
ということで、次に地球で最も財力を持った人が選ばれた。
惑星Xの代表は言った。
「彼は、地球でいう資産という共通の価値観であるお金に相当するものを最も持っているようだ。
それは権力と同じく、宇宙では価値があるとはみなされない」
そこで次に、地球で最も知能指数が高い人間と、自信満々の人間そして肉体的に優れた人間の三人が選ばれた。
惑星Xの代表は言った。
「どれも、価値有るとはみなされない」
困った地球の代表を選ぶ組織委員会は、次に宗教のトップと、偉大なノーベル賞を得た人間を選んだ。
惑星Xの代表は同じように言った。
「これも同じだ」
どうしていいのか分からなくなった組織委員会は聞いた。
「何せはじめてのことですし、宇宙の価値は私達には想像もつきません。
宇宙で価値あるものとは、どんな事を指すのですか?」
代表は言った。
「そんな事も分からないのであれば、まだ宇宙とコンタクトを取る権限はないのかもしれませんね。
まぁはじめてのことですし、アドバイスをしましょう。
宇宙で価値あるものとは、全ての富や名声を投げうっても構わないとお互いに思える生涯のパートナーを持った人間です。
それも数年では意味がありません。
少なくも二十年以上の積み重ねが必要です。
付け加えるなら、できれば特定の団体に所属しておらず、人間以外の物や生物といった星全体や他の星のことも考えられる優しさを持った一般的な生活レベルで暮らす人間の事です。
更にいえば、快便で毎日トイレに行き..」と細かく続けられた。
組織委員会は「なるほど」と納得した。
その結果、それに一致する価値ある人間としてAが選ばれたのだった。
補足
価値とは、自分で決められるものではないといえるだろう。
人によっても大切なものは違う。
いわんや他の星や宇宙からみれば、どんなことに価値があるとみなされるか分からない。
お互いに大切だと思える共通の価値観として、通用するかもしれないものがあるのだろうか?
その一つとして、愛は普遍の価値があるとみなされるのかもしれない。
もっとも愛という概念が一致すればの話だが..
次は..66.前世