最終更新:2024年10月11日
67.価値2
A男は、世界的に有名な画家だった。
A男の書いた絵は、一枚あたり数億円で取引されていた。
A男は純粋に絵を書くことが好きであり、興味があるのはそれだけだったので、絵の取引額には、殆ど興味がなかった。
そんなある日の事、A男は気分転換に何か面白い事をやってみたいと思った。
考えた末、絵を世に出すにあたり、二つの方法を試してみることにした。
まず一つ目は、新しく書いた絵を自分の名前は全く出さず、偽名を使って出してみることにした。
オークションに出品し、広告も出してみたが、その絵は見向きもされなかった。
その後、二つ目の方法を試してみた。
それは、全く無名の画家の協力を得て、その絵に自分のサインを入れ、さも自分が書いたようにした。
そして「これは最高傑作です。このような絵はおそらく死ぬまで書けないでしょう」と念を押して市場に出してみた。
すると何とその絵は、これまでで最高値の値を付けたではないか。
A男はそれを機会に、引退することにした。
今では、協力してくれた無名の画家に絵を提供してゴーストライターとして、ほそぼそと生活している。
絵の方は、ぼちぼち売れてきているようだった。
補足
結局のところ、絵の価値とは何で決まるのだろうか?
お金と同じく、多くの人に価値があると共通して思われた時、価値が生じるのだろうか?
だとすれば絵自体の価値としての評価とは、思い込みのような幻に過ぎないのだろうか?
それであれば元の絵と模造との違いが、微妙になってくるといえるだろう。
仮にコンピューターに絵の価値基準を入れ、それで判定された時、純粋な絵としての価値評価となるのだろうか?
それならば、カラオケの採点と変わらないような気がしてくる。
仮に「踏み絵」のテストをしたとして、動物が踏まなかったとしたら、理屈ではなく価値があるとみなされるのだろうか。
どちらにしても、絵とは奥深いものであるに違いない。理屈ではない理屈がなければの話だが..
次は..68.独自性