最終更新:2024年11月7日
83.現実2
A男は、仮想現実サービスを利用することにした。
これは新しく出来たサービスで、五感と接続されることで、現実と同じ感覚を仮想現実世界で味わえる。
それでも、一種の虚しさを感じる可能性はある。
今回できたサービスでは、対策の一環として、その世界に入っている時は「現実世界の事を忘れる」というものだった。
経験や知識は、仮想現実で得たように記憶がすり替えられるようになっていた。
では、どうやって戻ってくるのか?というと、入る前に日数を設定しておくことで、仮想現実世界で睡眠に入ったタイミングで戻るようになっている。
A男はそれらの説明を聞いて、安心してサービスを利用することにした。
仮想現実世界では時間の感覚が違うため、脳の許容範囲として、5時間で一ヶ月まで設定できる。
A男は、はじめての事だということで三日にしておくことにした。
狭い部屋に入り椅子に腰掛け、ゆっくりと目を閉じてみた。
するとA男の脳波は、仮想現実サービスとリンクされたのだった。
そして仮想現実世界の三日間を終え、A男は戻ってきた。
クエスト(仕事)など、色々大変だったが、充実していた楽しく過ごせたのだった。
A男は、徐々にハマっていった。
毎日通うようになり、休みの日は連続して使用するまでになっていた。
そんなある日の事。
A男は仮想現実世界の中で仕事が行き詰まっていた。
どうやっても上手くいかない。
実は、この「なかなか上手くいかない」という環境も、現実感を強化するために設定されていた。
そこでA男は、仮想現実世界で気分転換をしたくなった。
ミニゲームというものがあり、やってみることにした。
ミニゲームとはいえ、しっかりとした気分転換を出来るよう、圧倒的リアリティーを持たせるように用意されていた。
A男はゲームを行うため、狭い部屋に入り椅子に腰掛け、ゆっくりと目を閉じてみた。
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すると、ベッドの中で目が覚めた。
A男はうつらうつらしながら起きると、朝のルーチンワークを終えた。
「さぁ、今日は何をするかな?」
A男は、休日は何をして楽しむかと考えてみた。
「よし、今日も仮想現実サービスへ行って、続きを楽しもう」
A男は、何となく「何か変だ」とは感じていた。
と言っても、現実の煩雑さの中では、さほど気にすることもなかったため「考えることがバカバカしい」と思い、直ぐに忘れていた。
そんな中、A男の現実世界は、無限ループしていたのだった。
補足
現実とは何だろう?他との関わりがあり、規則があり、それらを破るとペナルティが生じる事もあれば、報酬が発生することもある。
仮想現実に虚しさを感じるとしたら、簡単に好きなようにできてしまうからだろうか?
であるなら、それらを現実というものだとしたら、それらを含めて仮想現実にしてしまった場合は、どうなるのだろうか?
もっといえば、幸福は求めるものであり、不幸も含めて現実感があるということだ。
それであってこそ、自分自身の意思や努力で将来を決め作っているという感覚になれるのだろう。とはいえ、それもパターンの一つに過ぎないのかもしれない。それさえも含めた仮想現実世界が提供された時、私達は現実との区別はできるのだろうか?
実際にゲーム内で戦う時、調子良く勝つ時もあれば、逆に思い通りにいかなく負ける時もある。それは現実でえられる感覚に似ているのかもしれない。ただそれが脳だけなのか、全身かの違いだけとなる。
感覚(質)と記憶(情報量)で出来ているのであれば、生存に関わる痛みと快楽が提供されることで、いとも簡単に現実は仮想現実になりうるともいえるのかもしれない。
その時、現実に戻ってきたことをどうやって確認するのだろうか?
次は..84.正当性
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