最終更新:2024年10月11日
40.道徳性
A男は、スクープを追いかける記者だった。
ネタがなく、同僚や後輩にドンドン先を追い越されていた。
そんなある日の事、A男は偶然「透明になる指輪」を拾った。
どうやら可視スペクタクルで光の屈折を変えているらしい。
A男は思った。
「普通なら、やましい目的で使うんだろうが、俺は違う。不正をあばく正義のために使ってやる」
A男はその指輪をはめ、著名人が裏で行っている実態を、次々と暴いていった。
そのお陰で、A男は記者の中でもトップクラスとなった。
ところが、同時に常に命を付け狙われるようになるハメに陥った。
権力者にとってはこれほど都合が悪いものはなかったからだ。
A男は超一流のヒットマンに二十四時間付け狙われた。
そのため、寝ている時も指輪をはめることになった。
その結果、A男は遂に指輪を外せない状態となってしまった。
A男はこの危機を打開するため、影武者を仕立て上げ、自分が死んだように見せかけた。
しかし死んだことになったため、この絶好のスキャンダルを出すことはできなかった。
A男は記者魂に命をかけていたため、不正をあばく正義感にかられた。
諦めきれず、整形をして名前を変えることで、遂に世に出すことになった。
同時に、透明になる指輪の効果もそのタイミングで切れたのだった。
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「これで命を狙われなくてよくなるから、これで良かったのかもしれない」
A男は、そう思った。
すると物陰からA男を見ていた男がいた。
その男は透明になる指輪を作った男だった。
男は言った。
「やはりな。これでA男が影武者を使って殺させたことをスクープに出来る」
指輪は透明になる目的で作られたのではなく、本性を暴くために作られていたのだった。
補足
道徳性を保つためには、社会性を保つ必要が出てくるといえるだろう。
であるなら、社会を守るための建前として、他人を傷つけてはいけないということになる。
なぜなら、自分自身も傷つけられる可能性が上がるため、安心して社会生活を送れなくなるからだ。
問題は、社会を守る建前が、どこまで通用するか?だ。
これは「相手のため」と言って「自分のため」に行動することにも似ている。
となれば、道徳性を保つのは複雑かつ簡単ではいように思えてくる。
社会性が人間の持つ基本的な傾向であるなら、複雑かつ簡単ではないということ自体「人間らしさ」といえるのかもしれない。
道徳性自体を利用されなければの話だが..
次は..41.芸術
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