81.痛み2
81.痛み2 Aには、痛みを感じなかった。 これは身体的なものだけではなかった。 そのため、誰かに何を言われても何も感じなかった。 何も感じなかったため、誰かに何かを言われる事を恐れる必要もなかった。 言われた人の気持ち […]
81.痛み2 Aには、痛みを感じなかった。 これは身体的なものだけではなかった。 そのため、誰かに何を言われても何も感じなかった。 何も感じなかったため、誰かに何かを言われる事を恐れる必要もなかった。 言われた人の気持ち […]
80.証明 神は激怒し、A男を叱咤(しった)した。 「お前は、何様なのだ!」 確かにA男は、神を否定した。 神の矛盾点を数多く述べた。 ところが、その後神の怒りに触れたのだ。 A男は、恐る恐る言った。 「何様と言われまし
79.曖昧 A子は遂に「若返りの秘訣」を編み出した。 それまでA子は、日々老いていくことに耐えられなかった。 様々な事を試した結果、殆ど効果を感じられなかった。 A子は、焦りを感じていた。 久しぶりに会った同級生が歳を取
78.同一性 Aは、目覚めた。 そして、びっくり仰天した。 Aが驚くのも無理はなかった。 Aが起きると、そこにはハエになっている自分がいたのだから。 Aは、何が起きたのか懸命に思い出そうとした。 「そうだ。幽体離脱の訓練
77.信頼 A男は、年中お金に困っていた。 どんぶり勘定で、努力すればするほどマイナスになり、お金のやりくりで常に苦労していた。 A男はお金の事でこれ以上悩みたくないと、心底思っていた。 そんなある日の事。 A男の元に、
76.正体 A博士は、目の前に置かれたりんごを眺めていた。 手に取り、実際にかじってみると、美味しいりんごの味がした。 A博士は、呟いた。 「ふむふむ、なるほど。確かにりんごだ」 実はそこに有ったのは、りんごではなくみか
75.自己 A子は、A子ではなかった。 A子がそれに気がついたのは、最近だった。 A子は一般的な幸せな人生を歩んでいた、と思っていた。 それは全て他人の人生だったのだ。 それは、二年前の事である。 A子は、虐待をはじめ精
74.証拠 Aは、騙されるのが大嫌いだった。 とはいっても、全てを疑っていても何も進まないため、信じられる根拠が必要だと考えていた。なぜなら、 それらしき事は、いくらでもでっち上げられることをAは知っていたからだ。 いく
73.存在 博士は、遂に不老不死の薬を完成した。 それは酸素と混ぜ合わせ、吸い込むだけという手軽さだった。 最初の治験として、密かに応募していたA子が試されることになった。 A子がそれを吸い込むと、あっという間に不老不死
72.真偽 A男は狡猾だった。 ずる賢さにかけては、右に出る者はいないだろうと自負していた。 この自信から、A男は自分以外の者は腹の中では常に小馬鹿にしていた。 同時に、A男は曖昧さを利用する達人でもあった。 それは法律