5.洗脳
A男は苦しんでいた。
A男は薬物中毒者で、本気で手を切りたいと思っていた。
病院にも通院し、様々な方法を試してみた。しかしそれらは全て、一時しのぎに過ぎなかった。
A男は本気だったので、ある人物に頼むことにした。
それは、洗脳を専門に研究してきた人物だった。
A男は願いでた。
「どうか、私を洗脳してください」
すると、その人物は言った。
「それは出来ません」
A男は不思議に思い質問した。
「なぜ、出来ないのですか?」
その人物は答えた。
「それは、個人の自由意志を尊重しているからです」
それを聞いたA男は言った。
「え、でも私からお願いしているのですよ?」
その人物は言った。
「それは分かっています。そうは言っても、弱みにつけこんでいることになりかねません。それに、洗脳してもらいたいと洗脳されている可能性もあります。どちらにしても、個人の自由意志を尊重したいのです」
A男は引き下がった。
「それなら、仕方ありませんね」
すると、その人物は言った。
「とは言っても、諦める必要はありません」
A男は訝しげに言った。
「先程、洗脳は出来ないと言われましたよね?」
その人物は説明した。
「はい。確かに言いました。確かに私からは出来ません。そこで、自由に洗脳できる装置が開発されたのです。
洗脳できると言っても、あなたの様に自分の意思がある人だけにしか効果がありません。
しかも、本人のみにしか効果がありませんので、悪用されるおそれもない製品です」
それを聞いたA男は、喜びを隠しきれなかった。
「それは凄い!是非、その製品を購入させてください」
その人物は言った。
「はい。もちろんいいですよ。価格は三つの洗脳まで可能で、一千万円となります」
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A男は驚いた。
「それは、ちょっと高いな」
その人物は言った。
「そんなことはないと思いますよ。何せこの装置を使えば、ある意味でどんな人間にでもなれるのですから。しかも、犯罪者も減らすことも可能なのです」
A男は「なるほど」と納得した。それでも、何か丸め込まれた気がしていた。
その人物は畳み込むのような口調で言った。
「さぁ、買いますか?それとも、一生を中毒者として過ごしますか?」
補足
洗脳は本人の意識しない内に、いつの間にか変えてしまうことに使用されると問題だといえる。それが、何かの組織的なものへの従属であれば、尚更だ。
では、本人が求めているとしたら、どうだろう?
何かの依存症を辞めたい。犯罪者として二度と間違いを侵さないようになりたいなど、問題がないように思える。
それでも自由意志が損なわれる、或いは洗脳されたい洗脳を施されている可能性も否めない。
であるなら、そのような装置があり、本人のみにしか効果がなければ、どうだろう?
メリットばかりのような気がする。
もちろん、本人が望む洗脳が「ある組織に従属したい」といった、本人が望むもの自体が既に洗脳されたものでなければの話だが…
次は..6.祈り
感想
この短編小説を読んで、自由意志の重さについて深く考えさせられました。私も過去に、自分の意志を疑う状況に直面し、選択の難しさを痛感した経験があります。A男が洗脳を求めるシーンは、絶望と希望が交錯する瞬間をリアルに描いており、その葛藤が心に響きました。
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