最終更新:2024年10月11日
69.選択2
悪魔はA子に呟いた。
「さぁ、どちらか選べ」
A子は、その選択肢に戸惑いを隠せなかった。
目の前には、三つのボタンがある。
その内の一つを選び、二十四時間以内に押さなければならない。
悪魔は囁いた。
「三つのボタンは、それぞれの人間達の運命に繋がっている。
ボタンを押した人間達は助かる。
押さなかった人間達は十年以内に大きな事故に合い、生涯不幸な人生を歩むことになる。
残った人間は生涯に渡り幸福な人生を歩める。
時間内に選べなければ全員が死ぬ。
さぁ選べ」
そして、それぞれのボタンに繋がっている人間達は、こうだった。
一つ目のボタンは「刑務所にいる囚人達、千人」
二つ目のボタンは「A子もファンである、今売れている三人のアイドルグループ」
そして三つ目のボタンは「年に数度ほど連絡をとっている両親」である。
A子は、個人的にはもちろん両親を選びたかった。
次にアイドル、そして囚人達と言いたかった。
とはいっても、数で言えば圧倒的に囚人達である。
たとえ二人に一人の再犯率があるとはいえ、それでも半分である。
A子には、とてもではないが決める勇気はなかった。
それでも、決めなければ全員死ぬことになる。
となると、問題は悪魔の信憑性となる。
悪魔は選択肢を出す前に、実際に力を見せつけたので、疑うわけにはいかなかった。
悪魔は言った。
「何を迷うことがある。お前はこれまでも、選択してきたではないか。
大勢の命よりも一部の幸せを選んできたではないか。
これで見てみぬふりは出来なくなった。それだけの話だ」
補足
平等と道徳は、簡単に解決できない問題だといえるだろう。
私達は普段、感情的そして主観的に物事を考えている。
もしかすると、身近な物事を考えていくことで精一杯といえるのかもしれない。
それでも、この問題に目を背けても許されるわけではない。
私達は直接手をくださないにせよ、大勢の命を奪って生きているのだから..
実は、この物語には、結末があった..
A子は決められなかった。そこで決断した結果は、次のようなものだった。
「私は決められない。でも全員死ぬことを黙って見ていられない。
私は決めたわ。私を殺してちょうだい。
それで、皆が助かるのなら、私はそれでも構わない」
すると、悪魔は言った。
「クククッ。そうか。そう決めたか。
本来であれば取り決めいがいは許されない。
だが、お前の命も奪わない」
そういうと、悪魔の周りは煙に包まれた。
それを聞いたA子は「えっ!」と驚きをみせた。
煙の中から、なんと仏が現れた。
「A子よ、よく決断しました。私はあなたを試したのです。あなたは見事に試練をクリアしました。あなたが死んだ後、天国に行けることを約束しましょう」
それを聞いたA子は言った。
「試すなんて、最低ね!
私は死んだ後なんて分からないから、どうでもいいわ。
今の人生を幸せにしてちょうだい」
次は..70.無限