最終更新:2024年11月7日
42.経験
それはハラハラドキドキの、スペクタクルファンタジーの連続だった。
A子は、毎日の生活にとても満足していた。
ベーシックインカムにより毎月給付されるお金で十分足りていたので、仕事をしないで生活をしていた。加えてボランティアで創作活動を手掛けており充実した日々を送っていた。
そんなある日の事、これまでにない画期的なオンデマンド配信サービスが開始された。
そこで配信されるものは、涙あり笑いあり、何でもありのどれだけ見ていても飽きないものばかりだったため、一日中どころがズッと見ていられた。
他の娯楽もそれとは比べ物になるものはなく、オンデマンド配信だけで満足できるため、殆ど意味をなさなかった。
それはA子が生まれた時からあり、食事は家に届けられ他の全てはインターネットで処理できるため、A子は一歩も外に出たことがなかった。
それでもA子は、インターネットの情報とオンデマンド配信から得た知識により、この世のあらゆる事を知っていたため、色々な事を想像できた。
そんなある日の事、何事も経験しないと気がすまない人生を歩んできたB子とリモートで対面する機会があった。
A子は、自分が知らないことを聞けるのではないかと、楽しみにしていた。
ところが実際に話しをしてみると、自分が知っている話ばかりだった。
A子は言った。
「申し訳無いけど、私が知っていることばかりでしたわ」
するとB子は言った。
「そうなの。それは残念ね。でも実際に経験してみないと分からないんじゃないかしら。あの感じは伝わらないと思う」
それを聞いたA子は、最後にこう締めくくった。
「そうね。それはあなたにも言えることなんじゃないかしら」
そして、接続が切れる前に2人同時に言った。
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「でも、想像はできるわね」
補足
ただ知識を得るより、経験した方が身体全体で感じられるので情報量が多いといえるのかもしれない。とはいえ、経験しないと知識を得られないというわけでもない。
しかも、感じ方は人それぞれなのだから、尚更だといえるだろう。
どちらにしても「見える、見えない。気づく、気づかない」は、どこに重要度があるかでフォーカスする箇所が変わり違いが生じる。
つまり、価値観でも変化する可能性がある。
人生と研究とは違うわけだから、客観的かつ多角的に分析しているわけではないし、尚更だといえる。
それでも、コミュニケーションと共感を考えた時、どうなるだろう?
同じ情報でも、知識だけ得た人と実際に経験した人では話が合わない可能性が高いと思える。
本当にそうなのだろうか?
例えば、ハワイのワイキキビーチを映像だけで観た人と、実際に行った人では、情報量が違うといえる。
映像ではそこに映し出されているものしか分からない。
実際に行った人は、潮の香りや人だかりや、アイスを売っている店など細かいことも記憶に刻まれている可能性がある。
仮に、それらの情報全てが映像で観られるなら話は別だ。
もし実際に行った人が、メガネに備え付けたカメラで全て記録していたとして、それを映像で観たとしたら、少なくとも「視覚だけ」という意味では同じといえるのかもしれない。
もちろん視覚は五感の一つに過ぎない。
五感の全ての情報を得られることで、はじめて経験した情報と同じ情報を得られたということになるだろう。
5感全てに接続されない限り..
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