15.事実

A子は、知っていた。

日本の首都が福岡県だということを、頑なに信じていた。
調べた時、それが東京都だと出てきても、信じなかった。
友人からは馬鹿にされが、A子は益々、譲らなかった。

A子には行動力があり、意地もあった。

そんなある日の事、A子は財力もあったため、ある組織を立ち上げた。

専門家を集め、あらゆる角度から、日本の首都が福岡県である根拠を集めていった。そして、世界中の著名人に語りかけていった。政治家にも深いコネができた。

それから三十年が経過した。

A子の努力のかいがあり、世界中から、日本の首都は福岡県だという専門家からの意見が殺到した。更には「百歩譲って違うとしても、南海トラフ巨大地震の可能性が高まっているのだから、移すべきだ」という意見も出てきた。

遂に、日本の首都が福岡県になった。

A子は、言った。
「ほら、私の言ったとおりでしょ。私は誰より先に知っていたのよ」

すると、あるレポーターが質問した。
「それは、元々誰から聞いた知識だったのですか?」

A子は、答えた。
「それは、内緒よ」

実はA子が聞いた相手は、福岡県が首都になると利益が出る大手企業メーカーの社長だった。
気になったA子は、その社長に聞いた。
「あれは、誰から聞いたんです?やっぱり利益のために、私に嘘を付いたのでしょうか?」

その社長は答えた。
「いや、事実だよ。あれは天からの声が突然聞こえてきたのだから。」

A子は自分の知っていたことの出どころが『お告げ』だと知り、驚きを隠せなかった。

補足

知識とは、何を指すのだろうか?
もちろん、信じているだけでは、それは知識とはいえない。しっかりとした根拠を元に、正当化しなければならない。

正当化とは、多くの人が知っている、或いは専門家を含めた多くの人が言っているということでも成り立つのだろうか?

信じられる根拠の一つに、出どころが明らかであることも含まれる。それが誰かの特定の利益が絡んでいる、または人智を超えているものだとしたら信頼性が薄くなる可能性がある。

とはいえ、それを判断するには自分自身のこれまでの経験と知識によるしかない。

そうなると、確かな知識というもの自体が曖昧になってくるといえるだろう。
情報が知識だとしたら、情報量が増えた時、事実を置き換えることも可能になるのだろうか?


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1.解釈


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